みなさん、こんにちは!
この記事は「【検証】「問題文だけ読む」縛りで、令和3年度大学入学共通テストの国語を解いてみた」の、解き方解説第三弾になります。
(検証結果と第一弾、第二弾解説については、下記をご覧ください)
今回は、「小説において、本文を読まずにどう回答したのか」を紹介します!
前回までと同様、みんなが思っている以上に問題文から読み取れることが多いから、その点に注目して読んでみてね
今回の問題のポイント
今回の問題はこちらです。
問3:傍線部B「何だかやましいような気恥しいような、訳のわからぬ一種の重苦しい感情」とあるが、それはどういうことか。その説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① W君が手を尽くして贈ってくれた品物は、いずれも自分には到底釣り合わないほど立派なものに思え、自分を厚遇しようとするW君の熱意を過剰なものに感じてとまどっている。
② W君の見繕ってくれた羽織はもちろん、自ら希望した時計にも実はさしたる必要を感じていなかったのに、W君がその贈り物をするために評判を落としたことを、申し訳なくももったいなくも感じている。
③W君が羽織を贈ってくれたことに味をしめ、続いて時計までも希望し、高価な品々をやすやすと手に入れてしまった欲の深さを恥じており、W君へ向けられた批判をそのまま自分にも向けられたものと受け取っている。
④立派な羽織と時計とによって一人前の体裁を取り繕うことができたものの、それらを自分の力では手に入れられなかったことを情けなく感じており、W君の厚意にも自分へ向けられた哀れみを感じ取っている。
⑤頼んだわけでもないのに自分のために奔走してくれるW君に対する周囲の批判を耳にするたびに、W君に対する申し訳なさを感じたが、同時にその厚意には見返りを期待する底意をも察知している。
さて、皆さんはこの情報から、どうやって正解を導き出しますか?勿論、前回の検証同様、本文は見てはいけません。
参考にZ会が出している「共通テスト【国語】の設問別正答率(2021年度)」の正解率(Z会員)では、この問題は 58.6% の正解率で、かなり低いものでした。
ですが、しっかり問題文を読むことで、正解率はかなり上がると思います。
それでは、早速解説に参りましょう。
問題文を熟考する
「やましさ」はマイナスでもプラスでも起きる
小論文のときと同様に、まず見るべきは問題文です。
問3:傍線部B「何だかやましいような気恥しいような、訳のわからぬ一種の重苦しい感情」とあるが、それはどういうことか。その説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
今回は、「ある感情について説明して欲しい」というのが問題です。それは一体どういった感情なのでしょうか?
まず、「やましいような」「気恥ずかしいような」感情であることが分かります。
ここで「ふーん」と先に行かず、しっかり熟考しましょう。「やましいような」感情とは皆さんにとって、どういった感情ですか?
「やましい」というのは、なにか後ろめたかったり、自分の中の良心をとがめるような気持ちです。皆さんだったら、どういったときにやましい感情を受けますか?
・・・
幾つか思い浮かびましたか?自分は、
- 本当は自分が犯したミスなのに、隠したせいで他の人のせいになってしまった
- そこまで努力していないのに、たくさんの感謝と称賛を受けてしまった
などのときに、やましく感じます。
このように、やましさは単にマイナス面でなく、プラス面でも起きることがポイントです。自分には行き過ぎた評価を得たりするときにも感じる感情だからです。
「気~」= すこし
続いて「気恥ずかしい」のところです。こちらは、わかりやすいですね。自分が恥ずかしいときです。
ですが、ここが「恥ずかしい」ではなく「気恥ずかしい」になっているのがポイントです。
この「気」というのは、「ほんのわずか、少し」という意味合いを含んでいます。「気持ち程度に恥ずかしい」という意味なんですね。
なので、
万引して捕まった…世間に到底顔向けできない!= 恥ずかしい
友達にゴミ拾いしているのを見られた = 気恥ずかしい
のように「気恥ずかしい」は、恥ずかしさの程度が少ないときに使われます。
こういうふうに単語に対して、どれだけ自分の引き出しがあるかは、小説を読むときにはすごい重要なポイントだよ
「訳のわからぬ一種の重苦しい感情」 = 本人も分かっていない嫌な気持ち
最後です。問題文では、主人公が「やましさ」や「気恥ずかしさ」のような「訳の分からぬ一種の重苦しい感情」を抱いていることが分かります。
はい!ここが重要です!
このことから2つの重要なポイントが分かります。
1つは、この感情を「本人がよくわかっていないこと」です。つまり、「やましさ」や「気恥ずかしさ」という感情に近いものの、少しそれとは違う、なにかわからない感情を抱いているということです。
2つ目は、重苦しい感情ですから、「本人にとっては嫌な感情だということ」が分かります。その要素が入っていない選択肢は、除外することができるわけです。
ここで、問題文から分かった情報を整理しましょう。まとめると、主人公の感情は、
- なにか後ろめたく感じたことがあった
- 少し恥ずかしく感じたがあった
- 上の2つの感情に似ているが、上手く本人では説明できない感じがある
- その感情を本人は嫌に感じている
というものであることが分かります。
ここまで読み解いてから選択肢を読むと、かなり解きやすいと思います。上記の感情を最も的確に説明した選択肢を選べば良いわけです。
過不足無く説明している選択肢はどれか?
では、早速選択肢を見ていきましょう。
問題文を読むと、この主人公は、W君という人から贈り物(羽織と時計)をもらったことに対して抱いている感情であることが分かります。
普通は贈り物をもらったら嬉しいはずで、説明ができない感情を抱くことはないから、何かしら複雑な状況がありそうだね
選択肢①:過不足がない
① W君が手を尽くして贈ってくれた品物は、いずれも自分には到底釣り合わないほど立派なものに思え、自分を厚遇しようとするW君の熱意を過剰なものに感じてとまどっている。
この選択肢は、先程説明した問題文に対して、過不足無く答えているものがわかると思います。
もらった品物が、自分とは釣り合わないから気恥ずかしさを感じていますし、ここまで良くしてくれる理由もわからず、分不相応に感じるやましさの要素もあります。
また、なぜここまで良くしてくれているかわからず戸惑っているということから、「わけの分からぬ」感情をいだいていることも説明できています。
この選択肢はかなり正解に近いと感じます。最初から正解に感じる選択肢が出ましたが、他の選択肢はどうでしょう?
僕たちも、いきなり友達からロレックスの100万円もする時計をもらったときに、同じ感情を持ちそうだね(笑)「いや、嬉しんだけど・・・」みたいな
選択肢②:「気恥ずかしい」要素がない
② W君の見繕ってくれた羽織はもちろん、自ら希望した時計にも実はさしたる必要を感じていなかったのに、W君がその贈り物をするために評判を落としたことを、申し訳なくももったいなくも感じている。
「申し訳なく、もったいない」という感情はやましさに通じますね。けれど、「気恥ずかしい」要素はあるでしょうか?
私達も「さしたる必要を感じない」ものをもらっても、困惑はしても「恥ずかしい」とまではならないですよね。
というわけで、この選択肢は解答として、少し要素が不足していそうです。
選択肢③:「訳の分からない」感情ではない
③W君が羽織を贈ってくれたことに味をしめ、続いて時計までも希望し、高価な品々をやすやすと手に入れてしまった欲の深さを恥じており、W君へ向けられた批判をそのまま自分にも向けられたものと受け取っている。
この選択肢は、やましさと気恥ずかしさについては OK ですね。
先程確認したように、やましさと気恥ずかしさはプラス面でもマイナス面でも起きるので、「やすやすと手に入れてしまった欲の深さを恥じて」の記載から、そこは問題なさそうです。
足りないのは、「訳のわからない」感情です。
誰かに自分には分不相応なものを買ってもらったところを想像してみましょうか。例えば、彼氏ができて、高級ディナーに連れて行ってもらったとしましょう。
もし、これが高校生であれば分不相応とみなされるかもしれません(別に無理していなければ、個人的には良い経験だと思いますが)。
そうして、連れて行ってもらった次の日、彼氏が周りの大人たちに「あんな高いところに、学生のうちに行くなんて」「親の金で行くなんて信じられない」みたいな批判を浴びていたとしましょう。
勿論、そのデートは楽しかったと思いますが、「申し訳ないことをした・・・」「自分も一緒にいたから自分も批判されているのでは」という思いを持つかもしれません。
では、ここで質問です。それは「訳のわからない」感情でしょうか?
確かに嬉しい感情と悲しい感情とがありますが、それらは別々に訪れています。そして、それぞれが別個に起きているために、理解できない感情ではありません。
これを「訳のわからない」とはいえなさそうですよね。
「訳のわからない」ってなるときは、大抵異なる感情が入り混じっているときに起きるよ。例えば、喜びと悲しみだったり、怒りと楽しみだったり。こうなると、本人からしたら、なんとも言えない感情になるよね
選択肢④:「訳の分からない」感情ではない
④立派な羽織と時計とによって一人前の体裁を取り繕うことができたものの、それらを自分の力では手に入れられなかったことを情けなく感じており、W君の厚意にも自分へ向けられた哀れみを感じ取っている。
この選択肢も、「気恥ずかしい」「やましい」(両方とも、自分の力で手に入れてないものを身に着けているという意味で)点はクリアしていますが、「わけの分からない」がクリアできていません。
せめて、「一人前の体裁を取り繕うことができたことに嬉しさを感じると同時に」となっていれば、哀れみを受けたことへの感情と混ざって、「訳が分からない」と言えそうですが、そういった説明もありません。
というわけで、これも違いそうです。
選択肢⑤:「気恥ずかしい」要素がない
⑤頼んだわけでもないのに自分のために奔走してくれるW君に対する周囲の批判を耳にするたびに、W君に対する申し訳なさを感じたが、同時にその厚意には見返りを期待する底意をも察知している。
こちらは、「訳のわからない」要素はありそうです。
「申し訳ないと思うけれど、結局自分のためなんじゃないの?」と思っているので、感謝と疑惑が入り混じっているからです。
「やましい」という思いについても「申し訳無さを感じた」でバッチリです。
しかし、残念ながら「気恥ずかしい」の要素がありませんね。これでは問題文に対して過不足無く答えているとは言えません。
正解は・・・①番
というわけで、以上見てきましたが、実際の正解はなんでしょうか?
正解は①でした!
ちなみに問題文を読むと、
私の為に奔走して呉れたW君の厚い情誼を思いやると、私は涙ぐましいほど感謝の念に打たれるのであった。それと同時に、その一種の恩恵に対して、常に或る重い圧迫を感ぜざるを得なかった。
とありました。この「感謝しているけど、あまりにも好意が重すぎて複雑だ」というのが「訳のわからない」感情であることが分かりますね。
まとめ:過不足無く答えるのは、実は難しい
以上、見てきましたが、いかがでしたでしょうか?今回は「過不足なく」が1つのポイントでした。
実は、これ1つの間違えやすい要因ともなっているので注意です。
本文を読むと、いろいろな情報が入ってきて、つい聞かれてもいないことに答えたり、あるいは書かれていないのに、事前情報として既に入っている情報として暗黙のうちに解答に含めたりして誤答するケースがよくあります。
聞かれたことだけに正確に過不足無く答えるというのは、実はすごい難しいのです。だからこそ、今回の正解率も低かったのかなと思います。
皆さんの今後の学習にお役に立てれば幸いです!
ちなみに、小論文との大きな違いは「感情」を聞くかどうか。聞かれた感情について、「あ、この感情を抱くときってこういう状況のときとかかな」って思い浮かぶと、解くときにかなり力になるよ。これは小説を読むだけじゃなくても、アニメや映画を見ていても意識すれば身につく力だね。
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