社会に出ると、「説得力」が必要になることの連続になります。
最もイメージしやすいのは、営業でしょう。誰かに物やサービスを売るためには、その顧客にその物やサービスが役に立つ/嬉しいものだと納得してもらわなければなりません。
他にも社内で協力者を得るとき、チームで活動する時など、説得力は有利に働くことはあれど、不利になることはありません。
この説得力。皆さんは、どうやって身につけますか?
残念ながら、説得力は社会人になると自然と身につくものではありません。だからといって、学生のときに弁論大会に出たり、人前で発表する機会を持つのはハードルが高いですよね。
大丈夫です。実は学生時代に行っている「振り返り」が、その最初の訓練として非常に役に立ちます。
この記事では、「正しい振り返りがなぜ説得力を向上させるのか」と振り返りの正しい方法について解説します。
① 「振り返り」をすることで、自分の考えを論理的に整理できる
振り返りをきちんと行うことは、自分の考えを論理的に整理することになります。
みなさんは、どちらの理由について納得しますか?
A「選択肢②だと思う。なんとなくそっちのほうが主人公の心情を表していると思うから」
B「選択肢②だと思う。なぜなら、「非常に切迫する思いだった」という表現があり、このことから主人公は焦っていることが分かるから」
ほとんどの人が後者の方に納得感を感じると思います。
これは、B の方がその回答を選択した理由についてきちんと説明できているからです。
ここで重要なのは、その回答が正解なのかどうかではありません。その後の対話につながるかどうかです。
例えば、Aであれば、「ふーん、そうなんだ」以上の会話は望めません。
しかしBであれば、「でも、「落ち着いて考えると、状況が絶望的ではないことに気付いた」っていう表現もあるから、希望が含まれている選択肢③が正解な可能性もない?」という会話が可能です。
説得というのは相手があって初めて成り立ちます。論理的に説明することでお互いの相違点や疑問点などを明らかにして、そこについて議論を深めたり、説明をすることで、相手の納得を引き出す必要があるからです。
Aのような発言でも納得してくれるのは、最初から相手が同意見だっただけであり、説得力ではありません。
このように、まずは「自分の言葉で論理的に説明できるか」が重要になります。
振り返りを何度も行っていくことで、この力が徐々に身についていくのです。
「振り返り」の仕方
この力を身につけるためには、◯か✕かを見て採点するという振り返りの仕方では、意味がありません。
是非、次のステップで振り返ってみてください。
- 正解か不正解かを見る前に、その回答をした理由を自分で考える
- 回答を見る
- 正解していたら、自分の考えた理由と一致しているかを見る。間違っていたら、自分の考えた理由との違いや見過ごした点を見る
振り返りというのは、間違った問題にだけ行うものではありません。たとえ正解だったとしても、必ず「自分が意図した意味で正解だったのか」も確認しましょう。
確認してみると、「正解したけど実は自分が見過ごしていた点が重要だった/もっと早く解く方法があった」ということもあります。
受験生を教えていて、特に見過ごされているなと思ったのが、この正解に対しての振り返り行為です。
間違いを振り返るのは、次に間違わないため
正解を振り返るのは、次も正解するため
振り返りの時には、この2点を忘れないでください。
単純に◯か✕かを見て、テクニック的な解放を学ぶ振り返りだと、テストの点数はあがっても、将来に役に立つスキルにはならないよ。でも、そういう人は社会人になっても結構いるんだ。施策が上手く行った/行かないだけで判断する人とかが、その一例だね
② 「振り返り」をすることで、自分の言葉の厚みが増す
では、自分自身で意見を論理的に説明できるようになり、議論のテーブルにつけたとします。
そこからは、相手との対話になります。向こうも聞きたい点や不明点がありますし、反対意見もあるでしょう。
先程の続きを見てみます。
B「選択肢②だと思う。なぜなら、「非常に切迫する思いだった」という表現があり、このことから主人公は焦っていることが分かるから」
C「でも、「落ち着いて考えると、状況が絶望的ではないことに気付いた」っていう表現もあるから、希望が含まれている選択肢③が正解な可能性もない?」
ここで、よくある回答がこれです。
B「・・・いや、解説本にはそう書いてあったから、自分の考えは合っているんだよ」
どうでしょう?急に説得力が弱くなりませんか?
たとえ人を説得できたとしても、これでは他の人の説得力(この例では解説本)を借りただけで、この人の説得力のおかげではありません。
これがまさに「厚み」がない状態です。
最初の思考はできているのですが、それ以上の深堀りがないと、このように説得力が薄れてしまうのです。
先程の薄い意見ではなく、
B「その可能性もあるけれど、選択肢③の問題文には、「このときの」とあるから、この傍線と同じ時間軸で考えないと行けないと思う。絶望的じゃないことに気付いたのは、翌日みたいだから、考慮に入れちゃいけないんじゃないかな?」
のように答えられるようになると良いですね。
「振り返り」の仕方
振り返りを通してこの力を身につけるためには、
解説に納得できなかったら、自分が納得する理由が出るまで考える
ことが必要です。
ここも生徒を教えていて、比較的この思考にハマる人が多いなと感じます。
途中まではいいのですが、解説と自分の考えが異なっていたときに、それまでの自分の考えはどこかに行ってしまい、解説に引っ張られてしまうのです。
ちなみに、これはビジネスの世界でもよくあります。
勿論、こういった引用や参考をすることは非常に重要です。
ただ、それに頼りっきりになってしまうと、どんどん自分の厚みが無くなってしまいます。
これが続くと、いつまでだっても自分のコアの説得力が磨かれませんし、常に他人の論/経験を借りなければなりません。
他人を説得できたとき、それは自分の力か?それとも他の人のおかげか?ここらへんを考えてみるのもいいよ
③ 「振り返り」結果をアウトプットすることで、自分の意見を外に出すことに慣れる
では、どうやって振り返りを使えば、良いでしょうか?それは、
振り返った内容を外にアウトプットする
ことです。いくら頭の中で思っていても、それが他の人と交わらない限り、説得力は培われません。
アウトプットすることで、下記のようなメリットがあります。
自分が正解だと思った理由も立派な一つの意見です。その意見が自分の頭の中から外に出ることで、洗練されることになり、もっと良い説明の方法につながるのです。
特に社会人になると、もっと意見が言い出しづらくなると思います。
「間違ったことを言って、無能だと思われて評価に響くんじゃないだろうか」
「場に合わないと思われて、顧客から怒られ、取引が無くなるんじゃないだろうか」
よく社会人から聞く言葉です。
だからこそ、学生のうちから外部に自分の意見をアウトプットすることに慣れ、自分の意見を洗礼させておくのは非常に大切なのです。
「振り返り」の仕方
もし、学校の先生や友達、塾や家庭教師がいれば、是非その人達に「なぜ自分はこれが正解だと思ったのか」を積極的に伝えてみましょう。
個人的には友達に説明するというのが一番オススメです。
同世代なので能力や知識量に他ほど差がないため、格好の対話相手になるからです。
ただ「人にこういう話をするのは、あんまりイメージがつかない/ハードルが高い」という方もいると思います。ただ、そんな人も大丈夫です。
そういう人は、
「どうして間違ったのか、次はどうしたら正解できるのか」を振り返った内容をノートにまとめる
ことから始めると良いでしょう。
つまり、頭の中で考えていることを文字でも良いのでアウトプットするのです。
特に今の世の中は書籍やブログ、SNS など、自分の意見を文字で伝える手段が溢れています。
口では上手く説明できなくても、まずはそれを自分から外に出す。この点から始めるだけでも十分に効果があります。
そして、しばらくして自分の解説を見返してみてください。
過去の解説を書いた自分は今解説を見ている自分に対して納得のいく解説を書いているでしょうか?
最初っから説得力がある人なんていないんだ。自分の考えを表現できるようになったら、次には口頭でも・・・という形でステップアップしていけばいいからね!
まとめ:振り返り習慣は説得力を鍛える第一歩
いかがでしたでしょうか?最後にここまで出てきた振り返りの仕方についてまとめます。
- 正解か不正解かを見る前に、その回答をした理由を自分で考える
- 回答を見る
- 正解していたら、自分の考えた理由と一致しているかを見る。間違っていたら、自分の考えた理由との違いや見過ごした点を見る
- 解説に自分が納得できるまで考える
- 考えた内容を周りの人か、ノートにアウトプットする
- 暫く時間を置いたあとで、同じ問題を解いてみる or もう一度自分の解説を見てみる
残念ながら、「間違ったら恥ずかしい」「正解していたらOK」と、どっちに転んでもきちんとした振り返りをしていない人が多いのが実情です。
是非、皆さんはただの点数を取るための振り返りじゃなくて、説得力を培うための訓練としても振り返りの時間を有意義に使ってもらえればと思います。