皆さん、こんにちは!今日のテーマは「比較」についてです。
考えてみると、わたしたちは日常生活で色々なものを比較しているものです。コンビニで買うカップ麺を比較したり、旅行先を比較したり、時間通りに起きて学校に行くメリットと寝坊して遅れていくメリットだったり・・・。
実はこの比較、結構奥深いのです。そして、比較を使っている人はよく見かけますが、使いこなせている人は多くないと思います。
そこで今回は改めて、比較の意味と、どういったところに気をつけて使えばいいのかを解説しようと思います。それでは、早速見ていきましょう。
比較とは
まずは、比較の定義から確認しましょう。
【比較】二つまたはそれ以上の対象を種々の観点から観察し、それらの類似性ないし同一性、および差異性を明らかにする思考の働き
コトバンク – 比較とは
上記を見ると、単純に2つを見比べるのではなく、似ている点や同じ点、更にはその違いを明らかにするのが求められていることがわかります。
数学であれば、大きさを比較して等式を証明することがありますよね(大小比較の証明)。
これを解くと、
これを「比較」という観点で深堀りすると、共通している「数字」という特性に着目することで、等式を証明しているんですね。
「3つの数字は全て正である」という共通点から、「正の数は何乗しても大小は変わらない」という特性に着目して解いているわけです。
判断のために必要な意見に、比較情報は含まれているか
では、この比較するという観点は、実生活でどれくらい重要なのでしょうか?
実は、各種の意見を聞いて判断する際に、この比較は非常に大切なのです。ここでは私の実体験からお話ししましょう。
検討すらされない意見
私はいま会社の主力製品の事業責任者を務めていますが、そうすると、色々な意見や要望を、社内外問わずいただくことがあります。
「顧客がこの機能を求めているから開発してほしい
「取引先にこの特典がないと販売できないと言われたので、追加してほしい」
「世間的にはこの価格は高いと言われているから、コストカットして安くしてほしい」
こういったときに、皆さんならどう判断されますか?
「判断できない」と思った方、大正解です。そうです、上記の情報だけでは判断できません。
なぜなら、これらの理由は全てその人の考えやその人が知っている情報のみで構成されていて、本当にその意見を取り入れたほうがいいかの参考となる比較情報が不足しているからです。
社会人になると、その意見を検討することにも時間とコストがかかるので、残念ながら検討することなく終わることも珍しくありません。
その製品やサービスの顧客が非常に少ない人数に限定されているならば、比較なしで意見を取り入れても良いかもしれません。しかし、例えば 1万人に使われている製品に関して、上記のような意見を全て採用していたらどうなるでしょう?
製品には色々な機能がつくでしょうが、誰向けの製品かはっきりしなくなり、機能も多くて使いづらくなり、更にはその開発や販売の手間も増え、社員でさえ仕様を把握できないものになるでしょう。
比較情報が入っている意見は検討しやすい
こういったときには、比較情報が大事です。
例えば、次のような意見であれば、みなさんも意見を聞いたときに判断しやすいと思いませんか?
「顧客がこの機能を求めているから開発してほしい」
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「A社がこの機能を求めている。調べてみると競合他社はこの機能を持っていないようだ。そこでこの機能を求めている顧客と求めていない顧客を比較した所、より長く使ってくれる顧客のほうがこの機能を求めている割合が高いことが分かった。なので、この機能を開発してほしい」
ここでは、顧客の言っていることだけを伝えるのではなく、競合他社との比較や、機能を求めている顧客と求めていない顧客の両方に関しても比較をしています。
勿論、これだけで判断できるわけではありませんが、検討してもいいと感じると思います。
このポイントは、自分が何かの判断を下さないとといけない状況になったときだけでなく、誰かに判断をしてもらうために、どういった情報を渡さないといけないのかという点でも役に立ちます。
比較する際に、正しい比較対象を選んでいるか?
信濃川と富士山では、どちらが大きいか
もう一点気をつけないといけないのが、「正しい比較対象」を選んでいるかという点です。例えば、次の問題が出された場合、皆さんは解けますか?
無理やり答えられなくもないですが、同じ性質を比べていないので判断できません。こういったシンプルな例だと、明らかに比較できないことに気づけますが、実世界になると途端に難しくなります。
例えば、他人と自分を比べてしまうこと、ありませんか?自分もよくあります。
比較することでプラスになる場合はいいですが、かえって落ち込んだり、悲しくなった経験をした人も多いと思います。
しかし、冷静に考えてみるとおかしなものです。「人」という点では一緒ですが、他の点はどれだけ一緒でしょうか?
育った環境、置かれている状況、前提として持っている知識や能力。色々違う点があるので、単純比較することはできないのです。
社会人でもやりがち。競合範囲を間違えて比較する
仕事でも同様で、先程の意見をもう一度見てみましょう。
「A社がこの機能を求めている。調べてみると競合他社はこの機能を持っていないようだ。(省略)」
この場合、競合他社が実は全然違うところだった場合、この意見は役に立ちません。しかし、競合相手を間違えてしまうことなど、あるのでしょうか?
実はこれが結構あるのです。例えば、もしあなたが鉄道関連の会社に居た場合、こんなことを思いつくかもしれません。
「今後の車両はもっと個別の空間を用意したほうがいい。顧客もプライベート空間を求めているからだ。さらには駅の途中でも降りられたり、もっと自由に目的地を決めれたら最高だ。時刻表に捕らわれず、行きたい時間に行けるようにしよう。こんなことをやっている鉄道会社は存在しない!そうするとお金が沢山かかるから、一回乗るごとに 3000円ぐらい徴収すれば大丈夫かな」
さて、確かに他の鉄道会社はこのようなことをやっているところはありません。従って、競合が鉄道で、この案が実現できるならば、大ヒットするかもしれません。
しかし、上記の要望を持った顧客目線になって考えてみましょう。そうすると鉄道ではなく、タクシーを利用すると思いませんか?
なぜ、間違った案になってしまうのでしょうか。これは競合を「鉄道業界」に限ってしまったからです。
鉄道の利点は異なる場所へ早く安全に移動する手段を提供しています。つまり、移動手段を提供しているサービスが競合にあたります。なので、実は競合は「車、自転車、タクシー、バス、飛行機」等なのです。
アメリカ鉄道会社の衰退は、比較対象を間違えたこと
実は、この間違いを実際に犯してしまった企業があります。それが、アメリカの鉄道業界です。
アメリカは広い国土がありますから、日本のように寝台特急や新幹線などが普及しても良さそうなものです。
実際、当初のアメリカは鉄道に輸送の大部分を頼っていました。しかし、現在のアメリカ国内における主な移動手段は車か飛行機になっています。
なぜ、鉄道が衰退してしまったのか。それは技術革新によって自動車や航空機が普及してきた時に、鉄道会社がそれらの交通手段を「競合」だと考えていなかったからです。
これはマーケティング用語で「近視眼的マーケティング」と呼んだりします。
鉄道の本質的な価値は「人や物を目的地にまで運ぶ」ことにありました。しかし、当時の鉄道会社は自分達の価値は「車両を動かす」ことにあると思っていたため、飛行機や車が出てきたときに脅威を感じていなかったのです。
その結果、顧客を奪われてから初めて状況に気づいたのですが、気づいたときにはすでに遅しとなってしまったのです。
他にも、例えばマッチングアプリなら、競合は他のマッチングアプリだけでなくて、結婚相談所や仲人も含まれるよね。提供している本質的価値が何かをしっかり認識しないと、競合を間違えて捉えてしまうんだ
【まとめ】正しい比較対象を選んでいるか、意識する習慣を持とう
いかがでしたでしょうか?
数学で大小問題を解くときには、皆さんは単位間違いだったり、前提条件(nは正の数など)を確認してから、解くようにしているはずです。
これを数学という観点だけでなく、ぜひ日常生活にも延長させて考えてください。
いままで見てきたように、正しく比較することは意外と難しいですが、それでも何度も意識して使っていくことで、格段に比較する能力は向上していきます。
こういった点に注意するだけで、大きなミスは起こさなくなります。ぜひ参考にしてみてください。