最近このようなニュースを拝見しました。
ロシアによるウクライナ侵略をめぐり、日本国内のロシア料理店などに対してネット上での嫌がらせ被害が相次いでいるとのことです。
記載されたレビュー欄を見ると、「変な味した。人間肉?」などの心無いコメントと共に、低評価が押され、中には兵士の遺体の写真も投稿されたようです。
神戸市でロシア料理店「ロシアンピロシキ」を営むオリガさんも、同様の被害を受けたようです。しかもウクライナ国籍をお持ちで、日本には20年以上暮らしているにも関わらず・・・。
ネットではこういった誹謗中傷が絶えません。
今回は、こういった誹謗中傷がいかに的外れなものかを、高校数学で習うベン図から紐解いてみましょう。

自分たちもこういった心無い行動をしないように、しっかり学んだことを生かしていこう
誹謗中傷する人の理論
まずは、誹謗中傷する側の理論を見てみましょう(この理論が正しいかどうかは後ほど解説します)。
今回の件に関しては、非常にシンプルです。
- ロシアがウクライナ侵攻を行った
- そのせいで多くのウクライナ国民が甚大な被害にあっている
- ロシア人はウクライナ侵攻を始めたプーチン大統領を支持している
- したがって、ロシア人は非難されるべきである
さて、これだけ見ると確かに筋は通っていそうに見えます。
けれど、それは大きな間違いであることはすぐに分かります。

たとえ、論理が合っていたとしても、レビューを荒らすという手段は全く適切じゃないと思うけどね・・・
予習:ベン図とは?
それでは、先程の意見をベン図で表すまえに、まずはベン図について知りましょう。(既に知っている方はこちらからスキップできます)
ベン図とは、集合図とも呼ばれており、重なる円を利用して、複数の項目の集合間の関係を図持するものです。
例えば、1~10までの数を 2の倍数と3の倍数で項目分けしてみましょう。
- 範囲:1~10
- 2の倍数:2,4,6,8,10
- 3の倍数:3,6,9
- 2の倍数かつ3の倍数:6
これをベン図で表すと、次のようになります。

これがベン図です。ベン図で表すことで、全体の様子からそれぞれの共通点や相違点を視覚的に表すことができるので、ビジネスでもよく使われています。

ただし、ベン図では表示されている面積がそのまま実際の割合と等しいわけではありませんから、そこは注意して見る必要があります(2の倍数の方が3の倍数より多いが、2の倍数の方が円が大きいわけではない)

ベン図を見るときは、面積が実態を表しているかどうかは注意してみてね。ベン図とは違うけど散布図で使われるバブルチャートなんかは量的に正しい面積を表しているよ
ベン図で見えてくる視野の狭さ
誹謗中傷する人の間違ったベン図
では、先程見た誹謗中傷する人の理論をベン図で表してみましょう。

はい、このようになりました。さて、皆さんは違和感に気づくでしょうか?
最も大きな問題は、まるで「円の外の人が存在しないように描かれてる」点です。こんなきれいに全ての項目がすべての人で一致することなど殆どありません。
円の外にも目が向く正しいベン図
それでは、正しいベン図に直してみましょう。

こうやって見ると一目瞭然ですよね。先程の論理は一部の人にしか成り立たない論理です。
プーチン大統領の国内支持率は現在 60%~80% ほどと言われています(言論統制が引かれているロシアの中で、この数字の信憑性自体も疑われていますが・・・)この時点で、2~4割の人はプーチン大統領を支持していません。
さらには、ロシア国内でも多くの反戦デモが行われています。先日は TV の生放送時に、反戦のメッセージを掲げる女性が映ったことをご存知の方もいるでしょう。
したがって、ロシア国内でも戦争に反対している人がいることもまた事実です。
そのような人には「ロシア人だから」なんていう短絡的な思考による批判は当てはまりません。
また、この図を見ると、ロシア人以外にも目が向くはずです。
明確な支持を表していないとはいえ、2022年2月24日、国連安全保障理事会に提出されたロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案に対しては、インド・中国・アラブ首長国連邦(UAE)が棄権しました。
彼らはどうでしょうか?
見れば見るほど「ロシア人 = 悪」などというシンプルな論理は成り立たないのことは明白です。
ですが、何故か世の中の一部の人はこのことが分かりません。彼らはシンプルに見える見せかけの論理に飛びついてしまい、その結果、根も葉もない誹謗中傷が広がっているのです。

自分が見えている限界に気付いて、あえて外の情報を集める
ベン図を描くと、必ず外の範囲に目を向けることになるので、こういった誤解に気づきやすくなります。
もともと私達が自分で見えている範囲は非常にちっぽけなものです。ある図形を3人の人に見せたときに、
「この図形は、三角形だね」 「嘘つけ、四角だよ」 「何言ってんだ、丸じゃないか」
とそれぞれが異なる答えを言ったときに、だれかが嘘をついていると考えますか?結論から言うと、誰も嘘をついていません。
正解は、その図形が下記のような形をしていて、それぞれが別の場所から見ていたのです。

なので、頭の中でベン図を書いて、どの意見なのかプロットしてみるといいでしょう。他の意見が全く見えてないことに気づけると思います。
そして、それぞれの範囲において「ここに当てはまるのはどういうケースだろう?」と考え、情報を集めてみてください。
それだけであなたの世界は格段に広がるのです。