「今日は勉強したくない…」。その気持ちは「現在バイアス」の仕業

全般

 皆さんは勉強の予定を立てて、その通りに進めようと思ったけど、「あぁ、今日はもう部活で疲れたから、いいかな」とか「今週中に終わらせればいいから、今日は休もう」と感じて、その日は何もせずに終わったことありませんか?

 もちろん、自分もありましたし、社会人となった今でもあります(笑)

 実は、この行動については名前がついているほど、一般的な行動であり、それを利用したビジネスの形態も沢山あるんです。

 そこで、今回はこの心理はどういうものなのか、ビジネスではどう利用されているのかを学びながら、この心理を克服するメリットについて考えて見ましょう。

ぺそ
ぺそ

若い時からこの行動に気づいて、対応できるようになると、将来社会人になっても絶対に役に立つから、ぜひ参考にしてみてね!

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未来の自分に託してしまう「現在バイアス」

 先ほど例に挙げたような行動は「現在バイアス」と呼ばれていて、心理学や行動経済学でも取り扱われています。

 これは、未来の自分が受けるメリットと現在の自分が受けるメリットを比較したときに、今の自分が受けるメリットを優先してしまう心理のことです。

 例えば、夏休みの宿題を考えたときに、計画的に終わらせた方が将来的なメリットは大きいでしょう。

計画的に終わらせるメリット
  • 継続的な学習習慣が身につく
  • 最終日に詰め込む必要がなくなる
  • 余暇の予定が立てやすい
  • 勉強時間以外では宿題を気にせずに過ごすことができる

 しかし、今のやりたくない自分がいた時に、そういったメリットよりも、今やらなくてよいメリットを優先してしまうので、結局後回しにしてしまいます。

ぺそ
ぺそ

似た言葉で「現状維持バイアス」というのもあるよ。そっちは「リスクや失敗を恐れて行動せずに現状のままであることを望む」というバイアスで、今回の現在バイアスとは少し違うことに注意しよう。

「マシュマロ実験」

マシュマロ実験とは

 この現在バイアスの説明に使われる実験として有名なのが「マシュマロ実験」です。

マシュマロ実験

 1970年にスタンフォード大学で行われた、子ども時代の忍耐力と、将来の社会的成果の関連性を調査した実験。

 この実験では、4歳の子供に1つのマシュマロを提示し、15分後に戻ってくるまで食べるのを我慢できれば(この時子供は一人で誘惑に耐えなければならない)、もう1つ追加のマシュマロが与えられる。

実験の模様を録画した動画(1970年の実験とは別)

 結果、平均して77%ほどの子供は我慢できずに、1つのマシュマロを得るだけで終わった。

 このマシュマロ実験に参加した子供たちには、その後も追跡調査が行われ、マシュマロを我慢できた子供の方が、その後の学業や人間関係などでも優秀であったとされる。

マシュマロ実験の結果に対する疑問

 多くのネット上の記事では、これを持って忍耐力の必要性を訴えるものが多いですが、その後行われた再実験により、現状バイアスに打ち勝つ忍耐力が、将来成功する要因ではなかったことが分かっています。

 その再実験では、最初の実験よりも広範囲にさまざまな要素を組み合わせ行われ、その結果「2個目のマシュマロを手に入れたかどうか」は忍耐力よりも、被験者の経済的背景と相関が高いとされています。

 したがってその後の子供たちが長期的に成功した要因としては、

・「2個目のマシュマロを手に入れたかどうか」よりも被験者が経済的に恵まれていたかどうかの方が重要であること
・「2個目のマシュマロ」と長期的な成功は原因と結果の関係ではなく、経済的背景という1つの原因から導かれた2つの結果であったこと

が示されました。

 では、現在バイアスは存在しないのでしょうか?いいえ、そうではありません。

1ヶ月後の方が得られる金額は大きいのに…

 逆に「現在バイアス」がない世界を考えて見ましょう。その世界に生きるあなたに次の質問がされます。

どちらを選ぶ?

A:今すぐ1万円もらえる
B:1年後1万1000円もらえる

 さて、あなたはどちらを選ぶでしょうか?

 単純に選択肢を比較すれば、利益の大きい「B」を選択するべきです。しかし、現実世界を生きるみなさんの多くの人は「A」を選びたくなったのではないでしょうか?(自分もAを選びます)

 これは、現在バイアスが私たちに働いているからです。

ぺそ
ぺそ

「A」を選択したからといって、それが悪いことではないから安心してね。お金を得るのが先になったことで、その1年の間に買えた限定品などを逃すこともあるから。問題なのは、「バイアス」となるまで偏りすぎることだよ。

現在バイアスとビジネス

 現在バイアスは非常に強力なため、ビジネスの世界でも広く利用されています。例としてローンについて考えて見ましょう。

ローンでついつい買ってしまう仕組み

 ローンを使えば、目の前の商品を「その場で」「すぐに」自分のものにすることができます。一方で借りたお金は当然返さないといけませんから、返済する金銭を将来捻出しなければなりません。

 ローンには利息が付きますから、貯めてから買った方が金銭面では間違いなく得なはずです。

どちらを選ぶ?

A:今商品を手に入れて、数ヶ月かけて10万1000円払う
B:今はお金を貯めて、数ヶ月後に10万円で買う

 しかし、人は今目の前で商品を得られるメリットの方を大きく感じるため、ローンを組む人は決して少なくありません。

 この時、返済に無理のない範囲で購入するならば、問題ありませんが、現在バイアスに偏りすぎると、多額の借金を抱えることになり、将来痛い目に遭うことになります。

ぺそ
ぺそ

他にも「今すぐダウンロードできる」「届いた日から使える」とかもそうだね。周りの商品や広告を見ると、この現状バイアスをうまく使っていることに気がつくと思うよ。

【まとめ】現在バイアスに振り回されすぎないように、今から耐性をつけておこう

 以上、見てきましたが、いかがでしたでしょうか?皆さんが先延ばしにしてしまうからといって、過度に「自分に忍耐がないんだ…自分は何てダメなんだ…」と思う必要はありません。

 この現在バイアスは、大なり小なり全ての人に共通する心理だからです。そして、だからこそ、それをコントロールできることには大きな価値があります。

 みなさんも、これから社会に出て、色々なところで活躍すると思います。そうすると、初めは今目の前にある業務や顧客に対応すればよかったのが、徐々にもっと長期的な目線で対応や決定が求められることでしょう。

 これはサラリーマンかどうかは関係ありません。スポーツ選手になっても、画家になっても、個人事業主であっても、今目の前の仕事だけでなく、将来を考えた決断を下す時を何回も経験していきます。

 そんな時に、みなさんには目先のメリットに過剰に振り回されない人になってほしいと、心から願っています。

 というわけで、みんなも過度な現在バイアスに負けないで、頑張って将来につながることは、今取り組みましょう。そうやって一つ一つ乗り越えていくことで、社会に出ても役に立つ能力を鍛えることになるのです。

ぺそ
ぺそ

「やりたくないなぁ」って思いながらも、自分を奮い立たせて勉強できたとしたら、そのことを誇りに思ってほしいな。それはすごく小さなことに見えるけれど、将来の自分にとって、とても素晴らしいことをしているんだから。

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