#4 3Cとは?「受験」を例に分かりやすく解説(高校生のためのビジネス基本解説) 

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 ビジネス基本解説も早くも4回目になりました。前回は、自社のサービスを提供する価格を決めるのは非常に難しいことを学びましたね。

 価格を考える前に、「自社・顧客・他社」の3つの要素が分かっていないと、最適な価格は決められません。そこで今回は、その3つを俯瞰的に捉え、戦略を探るフレームワークである3C分析について紹介します。

ぺそ
ぺそ

具体例として「受験勉強に3C分析を当てはめてみたらどうなるか」という視点で解説しているので、よかったら参考にしてみてね。

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3C分析とは

 先ほど紹介した三つの要素を英語で書くと、「Customer(顧客)」「Company(自社)」「Competitor(競合)」となります。

 この3つの要素を使って分析を行うので、各要素の頭文字をとって3Cと名付けられました。

 とてもシンプルに見えますが、事業計画を考えたり、マーケティング戦略を決定する際にも使われる非常に有用なフレームワークです。

ぺそ
ぺそ

実は、この3Cというフレームワークを作ったのは日本人なんだ!その人はマッキンゼーの経営コンサルタントだった大前研一さん。大前さんが『The Mind of the Strategist』(1982年)という書籍の中で紹介したことで、世界的にも有名になったんだ。

3C分析の目的と注意点

 どんな手段でも「何のためにその手段を使うのか」が分かっていないと、効果は出ません。では、3Cを使う目的は何なのでしょうか?

 3Cでは、顧客・自社・競合の3つの要素を分析することで、成功要因(Key Success Factor)を見つけ出すことがゴールになります。

 つまり、ただ要素を分解するだけでなく、それらを照らし合わせて、「こうすれば成功できる!」という点を見つけ出して、初めて有効に3Cを使えたと言えます。

 ここを理解していないと、単純に「分析して終わりました」だけになってしまい、3Cを有効に使うことができません。

成功要因となる鍵を見つけ出すことが3Cの目的

3C分析を「受験」に当てはめて考えてみる

 では、実際に3C分析は、どのように利用できるのでしょうか?ここでは「大学受験」について分析してみましょう。

 まず、目的を確認しましょう。受験ですから、当然その受験する大学へ合格するための戦略を導き出すことがゴールとなります。

 続いて3Cのそれぞれの要素に、受験における自社・顧客・競合を当てはめてみます。

  自社 = 受験生である自分
  顧客 = 受験する大学
  競合 = その大学を受験する他の受験生

 それでは、まずは顧客である大学についてみていきましょう。

顧客である「大学」は、受験生に何を求めているか

 ここでは仮に中京大学の一般選抜前期日程で、経営学部の経営学科に受かる戦略を立てることにしましょう(以降説明をシンプルにするために、併願等の細かい条件は省いています)

 そうすると、顧客である中京大学は、経営学部を受ける受験生に次のことを求めています。

中京大学が一般選抜の経営学部を受ける受験生に求めていること

3教科型(外国語100点、国語100点、地歴・公民・数学からどれか100点)の試験において、希望する受験生の中で優秀な点数を取ること

 これをクリアした場合、中京大学はあなたに教育を与えることを対価として与えてくれます。

 大学受験の場合は、このように求めることをはっきりと大学側が明記しているので、顧客理解が簡単で助かりますね(一般的なビジネスでは顧客が何を求めているか知るには調査や深い洞察などが必要になります。)

 しかし、もっと深ぼらないとわかりませんね。特にこの「優秀な点数」というところが、解釈が生まれる要素になっていますし、テストも教科しか書いてなくて、具体性が低いです。

 そこで、過去の情報やテスト形式などをさらに調べると、次のように解像度を上げることができます。

中京大学が一般選抜の経営学部を受ける受験生に求めていること
教科科目マーク:記述
外国語コミュニケーション英語I〜III・英語表現I〜II100:0
国語国語総合・現代文B・古典B51:49
地歴日本史B74:26
地歴世界史B26:74
公民政治・経済51:49
数学数学Ⅰ〜Ⅱ、数学A60:40
全て100点/60分

 上記の「外国語 + 国語 + 地歴・公民・数学のうち一つ」の3教科において、他の2教科受験の受験生を合わせた上で、入学定員209人に入ること

※ 2023年の①募集要項、昨年度の②入試区分別結果をもとに作成

 これで顧客が求めていることがクリアになり、分析がひと段落つきました。続いては他社である他の受験生の状況分析に行きましょう。

競合である「他の受験生」の状況は

 今年の受験生の情報はまだ出ていないので、昨年の受験生を参考に調べてみましょう。そうすると、次のようなことがわかります。

中京大学の経営学部を受ける受験生の情報
  • 受験生は全体で2644人
    • うち928名が3教科or2教科の一般選抜を受験
    • そのうち、199名が合格
  • 300点中 65.7(%)≒198点が3教科型の最低点

 本当は各科目における得点率などもわかると非常に良いのですが、中京大学が公開している情報は以上になるので、それをもとに自社である自分の分析に行きましょう。

自社である「自分」の現状の力は

 最後は自社である自分の分析です。

 自分はどの教科が得意でしょうか?また、得点率はどうでしょうか?マーク式は得意でしょうか?それとも記述式?解く時間はいつも足りている?ミスの原因はどこに多い?

 勉強時間はどうでしょうか?習慣として勉強できる時間は確保できているでしょうか?自分の周りの環境は集中しやすいようにセットされているでしょうか?

 自分を軸に分析しても、これだけ色々な要素が出てきます。ここでは一例として、こんな人を考えてみます。

自分の情報
  • 好きな科目は、英語と数学
  • 得点が高いのは、英語
  • 過去問では、英語では9割取れているが、国語が2〜3割しか取れない
  • 毎日4時間は勉強に充てられる
  • どちらかというとマーク式の方が解きやすい
  • 自宅はあまり勉強に集中できる環境ではない

 以上で、3Cに基づいて事実を列挙することは一旦終了です。

 さて、今のままでは戦略まで到達していないので、ここから色々仮説を立てながら、戦略を立てていきましょう。

情報は出揃ったら、重なりに注目して分析する

 いよいよ、戦略を立てていくのですが、この時3Cの重なりの部分を意識すると戦略が立てやすくなります。

顧客が求めていないことは【無駄】

 例えば、顧客と自社で見たときに、顧客が求めていないことをやるのは全くの無駄になります。

先ほどの中京大学の例では、数学Bであったり、物理などは必要ありません。ここをやることに意味はないでしょう。

 ここは競合である他の受験生も同様です。ですから、たとえ同じ大学の同じ学部を目指している生徒とあなたで物理の点数に大きな差があっても、そんなことは一切関係ないのです。

 このことがわかっていないと、無駄な競争を行うことになり、結果何も生まれない状況になるでしょう。

競合が顧客に提供できている価値は【弱み】

 では、競合が提供できていて、自分が提供できていないにも関わらず、顧客が求めている箇所はどうでしょうか?

 ここは明確な「弱み」になります。シンプルに考えると、入試試験で300点中200点取れる人がいて、自分が150点しか取れていないなら、間違いなく対策する必要があるでしょう。

 しかし、科目ごとに細かく見ると、もしかしたら敢えてそこで勝負を挑まないことも考えられます。

 自分が英語で現状90点取れているのに、無理に弱みを無くそうとして、地歴に取り組んでしまい、結果英語の点数は落ち、地歴も点数が取れなかったら…。

 弱みというのは、相対的なものであり、否定的に捉える必要はありません。何でもかんでも弱みだから克服するのではなく、しっかり取捨選択することが必要です。

自分だけが顧客に提供できているところは【強み】

 逆に、自分は提供できているのに、競合が提供できていない価値は「強み」になります。

 先ほどの例で見るならば、現状過去問の英語で90点取れているのは、非常に大きな強みでしょう。

 合格最低点は7割行かないぐらいでしたから、英語はそれにプラスして20点以上取れているわけです。この上乗せは、大きな強みになります。

 この強みをさらに伸ばした方がいいのかどうかを戦略的に考えるのが次の段階です。今回のケースでは英語の最高点は100点であり、これからどんなに英語を伸ばしても10点しか上乗せできません。

 であるならば、強みは維持だけしておいて、国語という弱みを少なくする方向性が良さそうですね。

 逆に東大のような配点だと、理系教科に特化して強みを圧倒的に伸ばすという方法もあります。これは東大の個別試験の平均点が低いからできることで、伸ばす余地が非常に大きい場合は有効です。

自分も競合も提供できているところは【維持】

 最後は、競合も自分も顧客に提供できている価値の場合です。

 基本的にはここを注力することは少なく、競合に負けないぐらいの維持をすることが大切です。

 そうすることで、放置して弱みになることを防ぎ、もし良い感じで伸びそうだったら、強みに変換することもできます。

さぁ、いよいよ戦略を作ろう

 これで戦略を作る土台が揃いました。戦略を作る時には次のような方針が考えられます。

戦略の方針
  • 【強み】をさらに伸ばす or 作る
  • 【弱み】を克服する
  • 【無駄】な競争を避ける
  • 【維持】して、弱みになるのを防ぎ、強みに変える

 図で表すと、こういう状態を目指すことになります。

自分の立ち位置が、より顧客に近づいている

 戦略に唯一の正解はないので、あくまで参考までにですが、今回のケースでは、次のように受験戦略を立てることができます。

中央大学経営学部入学のための大戦略
  • 直接的に大学が求めている3教科試験において200点を次のようにとる
    • 【強み】を活かして、英語は90点。それ以上は目指さない
    • 【弱み】を克服するために国語、特に他受験生と偏差値で大きな差がある現代文にまずは焦点をあてる。最終的には40点は取りたい
    • もう1科目は自分が好きな数学で70点を取る。マーク式の方が好きなので、それが6割ある数学は【強み】にしたい
      • 簡単な計算問題が毎回あり、正答率もかなり高いので、ケアレスミスはしないようなチェック方法を作り【維持】する。その代わり、証明問題を新たな【強み】にしたい
  • 結果的に【強み】【弱み】につながるかもしれない要素について
    • 塾に通っている受験生と比較すると、勉強環境が集中できないのは【弱み】につながるかも。自分の部屋を勉強に集中できる環境に整える
    • 今の段階で一日4時間は、他の受験生と比べてかなり少ないと感じる。自分の集中力の無さは【弱み】になりうる。今一度、なんで中京大学の経営学部に行きたいのか、目的を見つめ直して、決意を新たにしよう

 これが大方針になります。

 ここから、より細かく各教科の分野において得意・不得意を見極めていく作業に入ってもいいでしょう。

一度分析して終わり・・・はNG

 ここまで分析して臨めば、受験勉強にも自信を持って、望めるのではないでしょうか?

 重要なのは、一度の分析で終わりにしないことです。競合や顧客の状況は常に変わっていきます。したがって、当初の情報をアップデートし、また分析し、戦略を洗練させていくことが大切になります。

 例えば、模試を受けることで、過去の受験生との比較だった競合の情報を、最新版にアップデートすることができるでしょう。

 また、過去問を解く中で、教科の得意不得意だけでなく、どの大学の試験形式が解きやすいかも異なります。

 例えば、自分が受けた時、東大は数学6問のシンプルだけれども試験時間が150分もあり、解くのに時間がかかる少数精鋭で過程も評価する形式でした。しかし、センター試験で合否が決まる大学の数学試験は、マーク式なので、多数の問題が出る回答一致形式です。

 今回の中京大学の例でも、同じ地歴なのに世界史と日本史で記述回答とマーク回答の割合が逆転していましたね。こういった情報をもとに自分だけの戦略を立てるのです。

 実際に、私は学校では習っていない倫理をセンター科目に選び(平均点がそこまで高くなく、自分の興味を持っている分野で、学習意欲に強みが出る)、独学で倫理を受けました。

 さらに、同じ教科でも大学の出題傾向によって、解答の仕方やスピード、正確性、範囲などが異なります。したがって、一つの教科に対して、さらに3Cを深ぼるのもいいでしょう。

 このように考えられる戦略は無数にありますし、その時の状況によって変わるので、繰り返し見直しすることが必要なのです。

ぺそ
ぺそ

ただし、戦略だけひたすら考えていても絶対にうまくいかないし、絶対の答えが出るわけじゃないんだ。大事なのは仮説を立てて、その後行動すること。そしてそれを振り返って、また仮説を立て直して、また行動すること。それを忘れないでね!

【まとめ】3Cというフレームワークをうまく使うと戦略が立てやすくなる

 いかがだったでしょうか?3Cというフレームワークを使うと、考える点や必要な情報がはっきりするので、戦略を考える上で非常に参考になります。

 今回は私たちに身近な「受験」をテーマに考えてみました。なんとなく3Cについて理解してもらえたのではないでしょうか?

 次回は実際のビジネスでどう使われているのかを解説しますので、ぜひ楽しみに待っていて下さい!

ぺそ
ぺそ

今回は省略したけど、より詳しく弱み・強みを判別するために、SWOT分析というのもあるんだ。もし興味が湧いたら、そっちも調べてみてね。

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