今回のテーマは教科としての「歴史」です。
歴史はかなり教える人の特徴が出るところかなと思います。上手い先生に教わると一気に好きになったりしますが、退屈な先生にあたると、本当に苦痛な時間になります。
とはいえ、せっかく歴史を学ぶのであれば、少しでも先の人生で役に立つようにしたいですよね。では、私たちはなぜ歴史を学ぶのでしょうか?
残念ながら学校授業だけでは、今回取り上げる能力を得るのは、かなりハードルが高いと感じます。とにかく限られた時間で数千年の歴史の出来事を薄く広く覚えていくことになるので、なかなか時間が取れないからです。
それでも歴史を学ぶ時間を無駄にしたくない場合は、是非この記事を参考にしていただけると嬉しいです。
歴史は「自分たちと同じ」人の記録
まず、意外と忘れがちな点ですが、「歴史」は「人の物語」だということを忘れてはいけません。物語なんだから覚えやすよね、ということではありません。
そこには間違いなくその時代を生きた人がいて、彼らも自分と同じように当時の状況下の中で思考を積んでいたということです。
この「人」は、皆さんと同じです。生物学的な意味ではありません。雨が降ったら嫌だなと感じ、筋肉痛になったら今日は運動したくないなと思い、誰かに怒られたら嫌な気分になる。そういった基本的な感情や考え方まで同じ「人」なんです。
もちろん時代によって、何に対してテンションが上がったり、下がったりするかは異なりますが、その感情に大きな差はありません。
清少納言と言われても、よく分かりませんが、
「有名ブログ『枕草子』の著者。感性が非常に豊かで、日常を切り取る描写が上手い。ただ、自分の顔にコンプレックスがあり、同じ職業で成果を出している同僚を妬んだりする一面がある(諸説あり)」
と言われたら、身近になりませんか?
大なり小なり、歴史上の人物も同様です。つまり、彼らの行動からは、自分たちも十分真似できる点があるということです。
ただ、より学びを活かしたいなら、もう一歩先に行く思考をしてみましょう。
「何をしたか」よりも「どういう状況で」「なぜ」が大事
受験で覚えるような「誰がいつ何をしたか」は、将来に渡って役立つ知識にはなりません。それよりも「なぜ、その人がその行動を取ったのか」の方がよっぽど重要なのです。ここまで考えることができて、初めて自分の将来の糧となります。
人は目の前の結果と原因を結びつけることは、比較的容易にできます。しかし、重要なのは現状から過去の事実の連鎖を辿っていくことが出来るかどうかです。今の家も、学校も、職場も、業界も、日本も、世界も、全て人の行動の上に成り立っています。
皆さんの周りにも 1 を聞いて 10 を理解したかのように返してくる人はいませんか?そういう人は、連鎖的に思考を紡ぐことができている人なのです。
これは、仕事に限らず、スポーツや部活とかでも活きる能力です。例えば、サッカーで練習試合中にコーチに「今日は右サイドを狙え!」と言われたときに、
(あぁ、たしかに前の試合で右サイドからの攻めは課題だったもんな。次の対戦相手もそっち側が弱いサイドだし)
「了解です!」
(とりあえず)
「はい!」
(え?今日の相手は逆サイドの方が攻めやすいのに…まぁ、指示だからやるか)
「はーい」
と、表面上はみんな指示に従っていますが、その背景まで考えが及んでいるかどうかではかなりの差があります。
この3人の中で誰が1番上手くなりやすいのかは、想像つきやすいよね。ただ、実際にこのケースが起きたら、それは明らかにコーチの説明不足だけど(笑)試合前の MTG で説明するべきことだね。
「そういうものだから」で思考を止めない
社会人になって、会社や業務を行うと「あれ?これなんでこんな風になっているんだろう?」と思うことが出てきます。
例えば、ノートパソコンが全員分配布されているのに、未だにホワイトボードで社員の予定を管理しているとしましょう。
皆さんは自分の手帳から往訪の予定をホワイトボードに写したり、会議室の予約を調整したりする作業を、ホワイトボードをにらめっこしながら行っています。
毎日朝一に書く必要があるため、業務時間が取られますし、たまに他の人が書き漏れしたり、間違えて消したりしてしまうため、確認の手間が入ったり、大事な来訪があるのに会議室が二重で取られていたりと、ミスに繋がったりしています。
一段階思考の人は、「うちはホワイトボードで管理する決まりだから、しょうがない」で終わるでしょう。そこから「こんな無駄なことをするなんて、自分の会社は微妙だ」と不平を抱くかもしれません。
しかし、それでは不満が澑まるだけで、何も学びはありません。
歴史を学んでいるときに「なぜ?」を辿る思考ができてると、こんな風に考えることができます。
こうなると、視野がかなり広がります。システム化する前に、年配の方にパソコンの使い方を教える必要がありそうなことに気づくでしょう。
また、ホワイトボードがない時代を知っている人にとっては、ホワイトボードがある現状で十分快適です。今に不満を抱いていないのなら、「現状だと不便じゃないですか」ではなく、「より便利になります」という方向性で説得したほうが良さそうですね。
【まとめ】今の状況だけを見る人は、簡単に過去の人になる
いかがだったでしょうか?先ほど見たように「今の状況」で話をするだけでは、同じ状況にいる人からしか共感を得られません。
「今の状況」は残念ながら、数年後には「過去の状況」になります。さらには、その「今の状況」でさえ、日本という環境や、あなたの職場だけで通用する状況だったりします。
みなさんの周りにも「とりあえず大学に進学したほうが安心だよ」という方はいませんか?それは過去の状況では正解かもしれません。でも今の状況でも本当にそうでしょうか?
ここでも「なぜ」という視点が必要です。なぜ、安心なのでしょうか?なぜ、その人は安心だと思っているのでしょうか?
もし、みなさんが「今の状況」を認識しつつ、「過去の状況」にも目を向けられたら。そしてそこから学べたら… どんどん、視野が広がる気がしてきませんか?
確かに受験で必要なのは、人物名であったり、年号だったりするでしょう。でも、それを覚えることで役に立つのは学生までで、社会人になっても直接的な役には立ちません(自分も社会に出て、四大文明を話題に話したことは一度もないです)。
けれども、過去の状況から現在の結果を理解できることは、大きな武器になります。
おまけ:長篠の戦いを考える
先述した通り、限られた時間の中でこのような思考をすることは難しいですし、調べる時間もかかります。しかし、歴史を学ぶときは、是非当時の状況と理由もセットで考えてみましょう。
最後にここでひとつ例題を出してみますね。皆さんも聞き覚えがある出来事だと思います。
「1575年、織田・徳川連合軍が武田勝頼を長篠の戦いで鉄砲を用いて破る」
さて、ここで鉄砲という手段だけに絞ってみても、これだけの疑問が出てきます。さて、当時の状況と理由を説明できますか?
Q. なぜ、織田信長は鉄砲を使ったのか
Q. 鉄砲が強いなら、なぜ他の大名は鉄砲を使わなかったのか
Q. 他の大名には使えない理由があったなら、なぜ信長はそれを使えるようになったのか