【天体】身近な出来事から始まる要因の連鎖を知ろう ~自分の視点を拡大させる

理科

 みなさんは、地球や宇宙について学校で習っていますか?例えば、中学校では地球の自転や公転、太陽の日周運動などを学んだ経験があると思います。

 考えてみると、不思議なものです。これも私達が生きていく上では特に必要な知識とはもはや言えないでしょう。

 大昔とは違い、天体の動きを見なくても Google Map があれば目的地へたどり着けますし、空の動きを見なくても Weather News があれば、1時間後だけでなく、1週間の天気を知ることさえ困りません。

 そこで今回は、天体の動きや学んだ知識そのものではなく、それを学ぶ過程がどんな役に立つのかについて話したいと思います。

 今回の内容を知っていると、「なるほど、そういう考え方で学べば、将来役に立つのか」と感じられると思いますので、ぜひ最後まで読んでもらえると嬉しいです。

ぺそ
ぺそ

もはや日常生活には不要とも思える天体や宇宙の話。何を考えて学べば無駄な学習にならないのだろうか。早速見てみよう!

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日本の四季はなぜ起きるのか

 例えば、日本の夏は暑く、冬は寒いですよね。しかし地球全体で見ると、ずっと寒いところもあれば暑いところもあり、日本とは四季が逆のところもあります。

 こういった現象は、なぜ起きるのでしょうか?

答えは「地球の自転と軸の傾き」

 理科で天体の動きを習った人はその理由を知っていますね。答えは「地球の自転と軸の傾き」にあります。ここで簡単に復習してみましょう。

 地球は太陽の周りを回っていますが(公転と呼ぶ)、その周期は 1年となっています。つまり、1年で地球は太陽の周りを一周するわけです。

地球は太陽の周りの1年かけて回っている

 地球の回転軸(地軸と呼ぶ)は、太陽の周りを回る軌道に対して実は 23.4° 傾いています。この傾きによって何が起こるのでしょうか?

地軸が傾いてると、受け取る太陽の熱量が違う

 先程見せた図の d の位置について実際に見てみましょう。

 太陽からは光を通して熱が地球に届きますが、当然地球の裏側にまで光が届くわけではありません。なので、わかりやすくその部分を色分けしてみます。

 さらに、この状態で地球が1回自転した時、つまり1日経過するときの動きを表してみました。

地球が d の位置にいるときに、太陽から受けとる光を図示

 ここで日本がいる位置(📍)に注目してみてください。

 もし回転軸がずれていない場合は、昼も夜も同じ時間になるはずですが、地軸が傾いてるため、この状態で回転すると、実際には夜の時間が長いことが分かります。

 また最も熱を受け取れる位置、つまり真っ昼間の場所に注目すると、太陽からの光が地上に対して斜めにあたっていることにも気づくはずです。

 なので、d の位置では、太陽から受け取れる光の熱が総じて少ないことが分かります。

 同様に b の位置に行ったときは、どうでしょうか?

 図で見ると分かる通り、こちらは先程とは逆で、太陽から受け取れる光の熱が総じて高いことが分かります。

地球が b の位置にいるときに、太陽から受けとる光を図示

 太陽から出る光の量が年間を通して変化しているわけではありませんから、気温を決めるのは光の量を受け取る時間になります。

 そしてそれらが1年を通して変化していることが分かりました。これが四季の正体なんですね(先程の図でいうと、b が夏、d が冬)。

 この事がわかっていると、よく試験問題出てくる「日本の季節が冬の時を選べ」などに簡単に答えられますし、次の項目についても説明できます。

・なぜオーストラリアは、日本と逆の季節になるのか
・ヨーロッパで太陽が沈まない日(白夜)があるのはなぜか

  さて、いよいよここからが本題です。

 こういった知識そのものは役に立たないかも知れませんが、こういったことを知ったり自分で理解することにはどんな意味があるでしょうか?

身近なものに影響を与える「要因」を知ることが学びになる

① 物事の連鎖を知る

「風が吹けば桶屋が儲かる」

 みなさんは「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざを知っていますか?

 現代では、「原因と結果の関係を確率が非常に低いにもかかわらず、無理やりつなぎ合わせて、こじつけつけるような理屈について表現する」という意味でも使われる場合もありますが、元々は「ある事によって、まったく無関係と思われるところに影響が出る」ことを表したものです。

 では、なぜ風が吹いただけで桶屋が儲かるのでしょうか?その理由は次のように説明されています。

  • 風が吹くと土ぼこりがたって目に入り盲人が増える
  • 盲人は三味線で生計を立てようとするから、三味線の胴を張る猫の皮の需要が増える
  • 猫が減るとねずみが増え、ねずみが桶をかじる
  • 桶を新しくしないといけないので、桶屋がもうかって喜ぶ

 このように直接的に関係性が無いように見えても、実は因果関係がつながっていて、片方が片方に影響を与えることがあります。

 そしてその因果関係は遠ければ遠いほど気づきにくいのです(これは物事の間にいくつの要素が含まれるかだけでなく、心理的に遠いものについても言えます)

 先程みた四季が発生する理由についても「地球は太陽の周りを1年間で1周している」「地球は1日一回自転している」という点を前提にして、

  • 地球の自転軸が太陽を回る軌道とずれているから、日照時間と光の差す位置がずれる
  • 日照時間が異なると、昼と夜の時間の長さが異なる
  • 光の差す位置が異なると、受け取れる熱量が異なる
  • 上の2つが異なると、地表に届く熱量が太陽に対する地上の位置によって変わる
  • 地上の位置と太陽の関係によって熱量が異なるので、四季が出来る

 となるわけです。

何段階の要因や関係性を考えられるか

 このように、目の前のことだけ見ていては「なぜその事が起こるのか」が説明出来ない事のほうが多いです。

 目の前の事をきっかけにして、以下にそこから連鎖して他のことにも考えを及ぼすことが出来るか。この力がある人とない人では、社会人でも全然違った結果を出します。

 なぜかというと、基本的に全ての仕事を一人で行うことは無いからです。

 例えば、議事録を書くという作業があったときに、その先の受け取り手の行動をイメージして書くのと、ただ記録を残すだけでは全く成果が異なります。

 受け取り手が忙しい人なら、最初に議題と結論を書いたほうが見た人が行動を早く出来るでしょうし、結論だけでなく経緯をしっかり追いたい人であれば、できるだけ正確に時系列順で記載を心がけるほうが良いでしょう。

 そして、仕事というのは他者に評価されて初めて成果となります。

 自分が議事録を受け取る人だったら、時と場合によって判断しやすいように形を変えてくれる人と、どんなときでも同じフォーマットでしか送ってくれない人だと、どちらをより高く評価しますか?

仕事1つとっても、役に立つ場面はたくさんある
ぺそ
ぺそ

これは営業から農作業まで同様だよ。特に1段階のつながりは意識出来る人が多いんだけど、2~3段階できる人は本当に少ないと思う。

農業だったら、最後の消費者だけじゃなくて、そこに届ける運輸業が運びやすいようになっているか売ってくれるスーパーの人が陳列しやすいか、とかまで考えているかとかだね 

② 広い視点で物事を捉える

 このように関連性を手繰り寄せていくと、思っても見ないほど大きなところに結びつくことがあります。

他国の銀行が潰れただけで、日本経済が悪化する時代

 例えば、皆さんはリーマンショックをご存知でしょうか?

 リーマンショックというのは、2008~2009年頃に世界規模での景気悪化・株価下落を招いた出来事で、日本でも株価が半額ほどになったり、就職氷河期を生んだり、上場企業を含む約1万5千件の企業が1年のうちに倒産したと言われたりと、その影響は非常に大きいものでした。

 しかし、よく世間で言われているきっかけは 2008年9月にアメリカの有力投資銀行である「リーマンブラザーズ」が経営破綻したことに過ぎません。

 なぜ他国の銀行が潰れただけで、日本全体の景気まで悪化してしまったのでしょうか?

 まず、リーマンブラザースが倒産したのは、サブプライム住宅ローン等の延滞が引き金になったと言われています。

 このサプライムローンとは「低所得者層を対象にした住宅ローン」です。つまり、あまりお金がない人にも住宅購入用の資金を貸し、その利息で利益を出そうとしていたんですね。

 当時のアメリカは住宅ブームが加熱していたため、たとえ銀行にお金を借りてでもマイホームを購入しようとしていた人が増えたのです。また、それを商売にする金融機関も増えていました。

借金して買ったとしても、その後価値が上がって結果的に利益がでるなら、借金をしようと思うのも自然のことだった

 しかし、住宅ブームが終わると、住宅の価値が下がり、もともと低所得者に貸し付けていたこともあって、なかなか返済がされないケースが増えていきました。

 このとき、このサプライムローン関連の証券を大量に抱えていたのが「リーマン・ブラザーズ」だったのです。

 そのため、彼らは十分な資金を回収することが出来ず、倒産することになりましたが、この住宅ブームは全米で起きており、プライムローンを扱っていたのはリーマン・ブラザーズだけではありません。

 日本でも有名な会社だと、生命保険会社AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)も経営危機に陥いりました。

 つまり、リーマン・ブラザーズ倒産はあくまで1つの象徴的な出来事にすぎず、実はその裏側で多くの金融機関が破綻の危機に陥っていたのです(実際に海外では、この出来事を「リーマンショック」とは呼ばず、「Financial Crisis(金融危機)」と呼んでいます)。

 そうすると、他の金融機関は安全策を取りたくなります。そうしないと今度は我が身が危ないからです。そのためにはどうすればいいか。

 答えはシンプルです。今お金を貸すと、返ってこない可能性が高いので、あまり貸さなくなったのです。

 これが、金融機関同士の貸し借りの滞りを招いたため、市場におけるお金の流れがストップしました。

銀行が短期のお金をあまり貸さなくなってしまった

私達はお金を得て、それを使うことで経済を回している

 お金の流れが止まることは市場経済の死を意味します。なぜなら、私達はお金を受け取って、それを使うことで経済を回しているからです。

 例えば皆さんがカラオケバイトで1万円稼いだとして、それを服を買うことに使うと、そのお金はお店の店員や工場で働く人に給与として渡ります。他にも衣服の材料を提供する農家や在庫管理をする倉庫で働く人にも渡るでしょう。

 そうした人が気晴らしにカラオケにくると、そのお金がカラオケ店に入り、また皆さんにバイト代が支払われるわけです。

 ここで、みなさんが服を一切買わなくなったとしましょう。そうするとその分衣服関連の職種についている人へお金が回らなくなります。そしてその人達の給与も低くなると、カラオケなどの娯楽へ使えるお金は減ってしまうでしょう。

 その結果、バイトを募集することはなくなり、みなさんへのバイト代も当然支払われません。

「生産」と「消費」が経済の基本にある

世界中がつながっている現代では、一箇所の停滞が全体に波及する

 これは非常にシンプルに例えた話ですが、実際の世界でも同様です。

 だからこそ、リーマンショックは全世界に影響を及ぼしたのです。また、世界中の取引で使われている基軸通貨である米ドルが、世界市場で回らくなったのも痛手でした。

 世界中の貿易や投資に悪影響が生じるからです。

 私達の住む世界はグローバル化が普通になっています。それこそ、鎖国していた時代であれば、このような影響が日本に来ることはなかったでしょう。

 しかし現状は違います。例えば、私達が使っている日用品で、日本産のものがどれだけあるでしょうか?食べているものはどうでしょう?

 仮に日本製に生活をしているとして、その原材料はどこから来ているでしょうか?その生産を管理しているシステムは日本の IT 会社のものでしょうか?

僕らの目に見えないところで、世界中のものや技術が使われている

 このように連鎖する世界を生きる中で、私達の生活の目の前だけを物事を判断することは出来ません。

 だからこそ今後の人生を生きる上では、視野を広げておかないと、「知らなかった」「なぜ、自分がこんな目に」など、危機への対応や対処が遅れてしまうのです。

まとめ:物事を大きな視点で捉えよう

 以上、天体勉強をするときにどういった視点で勉強すればよいのかについて解説しました。その視点とは、

  1. 物事の連鎖を知る思考訓練
  2. 日常から世界へ視野を広げる訓練

 の2つになります。

 ポイントは、天体というあまりにも私達の世界からは遠いところにある存在が、実は身近な影響を日常生活に及ぼしていることを知ることです。

 このことをしっかり理解し応用できれば、私達はもっと思慮深く世界を捉えることが出来ます。

 それこそ、まさに仕事でも人生においても有益な力になることでしょう。

ぺそ
ぺそ

身の回りにあるもので、考えてみると面白いかもね。例えば、今起きているコロナを「外出が不便になった」っていう自分に影響するところだけを考えるんじゃなくて、「自分が外出しないことによって、どんなところがどんなふうに困るんだろう」って考えてみると、視点が1つ上がると思うよ!

※ 宇宙開発自体にも価値はある

 今回はあくまで全体的な思考方法として役に立つ点をあげましたが、だからといって宇宙について調査したり、宇宙開発を行うこと自体には意味がないと言えません。

 たしかにそういった宇宙関連の職業に付く人は非常に付くないと思いますが、そこから派生して私達の生活を豊かにする技術や製品が発生することも、また真実だからです。

 少し古いですが、2012年の内閣府宇宙戦略室レポートに紹介されていた製品があったので、それをいくつかご紹介しましょう。

塗る断熱材「GAINA」

 ロケット打ち上げする際には沢山のエネルギーが必要であるため、熱が沢山発生します。そのときに、その熱からロケットや衛星を守る断熱技術が必要なりました。

 これを応用したのが、㈱日進産業です。

 何に使ったのかというと、建築用の断熱材として利用したんですね。名前は「GAINA」と言います。

 よくある断熱材とは違い、ペンキのように塗るだけで断熱が可能なので、複雑な形をしている物体の表面にも使うことが出来ます

 こちらは東北大震災の津波で被災した被災地(宮城県陸前高田市)の商店街を塗り替えるボランティアの際に使用されています。

出典:日進産業 ガイナカタログより

低反発素材「テンピュール」

 続いては「テンピュール」です。みなさんも聞いたことがあるかも知れません。

 そうです、枕やマットレスなどに使われている素材です。

 宇宙への打ち上げの時や地球への帰るときには非常に強烈な加速度や振動が発生します。その加速度は 3G と言われ、健康な人間が立っている状態で耐えられるギリギリぐらいの衝撃です(人間の心臓のポンプ力がを上回り、血が全身を回らない時間が続くと失神してしまうため)。

 そこで、この衝撃から宇宙飛行士を守るために NASA が開発したのが低反発素材であるテンピュール素材なのです。

 この素材は衝撃を和らげるだけでなく、長時間座ったり、横になっても疲れにくいので、色々なところで使われています。

出典:テンピュール 公式ネットストア限定ピロー
ぺそ
ぺそ

もし他の例も見てみたかったら、次の資料を覗いてみてね!

▼ 宇宙技術が民生に利用されている事例(内閣府宇宙戦略室)
https://www8.cao.go.jp/space/comittee/dai1/sankou4.pdf
▼ JAXA 新事業促進部

JAXA新事業促進部
(English) Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA)

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