電車内での「会話」はそこまで気にならないのに、なぜ「通話」はイライラするのか

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 みなさんは、電車内で誰かが携帯電話でしゃべっているのを聞いて、イライラしたことはありませんか?自分はあります(笑)

 しかし「なぜイライラするんだろう?」と考えて、かつ理由を実際に調べた人は少ないのではないでしょうか?

 そこで、今回はこの電車内での通話に対して、なぜ人はイライラしてしまうのかについて解説しようと思います。

ぺそ
ぺそ

最後に「電車内の通話」だけでじゃなくて、そこから学べる考え方も書いているから、ぜひ最後まで読んで見てね!

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作業中にもっとも集中が削がれる会話は?

 なぜ、人は電車内の通話を聞くといらいらしてしまうのでしょうか?

 そのことを探るために、下記の実験を見てみましょう。

 この実験では、大学生24名の被験者に対し、注意力を要するタスクを2回実行してもらいました。そのタスクの内容とは、コンピューターを使い、マウスのカーソルを動き回るドットにできるだけ近づけ続けるというものです。

 ただ、このタスクを実行する際には、ヘッドホンが装着され、下記のいずれかの音声が流されました。

  1. 女性二人が携帯電話で会話する双方の声
  2. 女性一人が携帯電話で会話する片方の声
  3. 女性一人が携帯電話で会話した内容を要約して話す声

 これらを聞いた後、先程のタスクにどれだけの差が出るかを調べたのです。

 結果を見ると、2番の片方の声だけを聞いた学生は、他の声を聞いた学生よりもこのタスクの実行結果が悪いことが分かったのです。

 この研究では、その他幾つかの実験が行われ、その要因について明らかにしています。(詳細について知りたい方は、下記の記事に詳しく載っています(英語))

脳が自然に補完する方向に集中力を使う

 この現象は「半分の会話」という意味で halfalogue(Half + Dialogue)と呼ばれています。

 Halfalogue の会話では、それを横で聞いている人からすると、その話の全体像がわかりません。

 会話の半分しか聞き取れないため、脳はそこにストレスを感じて、無理やり残りの半分を補完しようとして、集中力が奪われてしまうわけです。

 ちなみに、これは悪い事ばかりでありません。例えば、映画であれば、クライマックスなど「これは一体どうなるんだ!」のような状態(最終結末が分からない状態)に人は強く魅入られます。

 次にどうなるかが分からないこそ、そこに注意が惹きつけられるわけです。

 しかし、電話の通話のケースでは、結局どういった会話がなされていたのかは、最後まで明かされませんから、それがストレスになるわけです。

最後まで埋まらないパズルを脳が解くことになる

日本で「電車内の通話 OK」にすることはできるか

 この話を聞いて、あれ?と思った人もいるかも知れません。

 というのは、海外では電車内で携帯で電話していても、マナー的には問題ないからです。実際自分がサンフランシスコで BART(日本の電車のようなもの)に乗っていたときに、何度か電話している人を見ましたが、特に気にしている人はいませんでした。

 この halfalogue 現象が海外でも一緒だとすると、なぜ、日本だけ電車内での通話がマナー違反となるのでしょう?

 これには色々な理由が考えられますが、自分が思うにそれは、日本では特に電車内が「静か」だからです。

 日本でも、例えば賑わいのあるカフェ等であれば、電話している人が居ても、気にする人は少ないでしょう。それは、他の人の話し声や BGM 等に紛れているため、その半分の会話が目立つことがないからです。

 一方電車内では、通話に限らず、そこまで個別の会話が隠されるほどの音声が色々な箇所から聞こえてくることはまれです。

 もちろん、会話はされていますが、自分の体験からすると、アメリカに比べたら、全然小さな声だと感じます。

 したがって、マナー的に携帯電話の会話を NG にしなくても、別に良いと思います。が、日本の風土的には、周りを気遣って小さな声でしゃべるひとが多いので、恐らく難しいのだと思います。

 実際に先程紹介された実験が行われた場所は「静かな環境」でしたから、この Halfalogue が生じる環境を日本の電車は満たしていることが分かるでしょう。

環境が変われば、マナーも変わる
ぺそ
ぺそ

逆に考えれば、携帯電話であっても小さい声で会話ができれば問題なさそうだけど、電話しているうちに、知らず知らず声が大きくなる人のほうが多いから、それも難しいんだろうね

海外と日本では電車内のマナーのベースが違う

 さらにいうと、他国と比べると日本は電車内でのマナーが良い」のも理由の一つかもしれません。

 ここでは、乗車マナーが悪いとされているニューヨークの地下鉄と比べてみましょう。

 ニューヨークの地下鉄は、非常にマナーが悪いとされており、そのためマナー違反に関しては罰金まで課せられています。

 では、具体的にどのような件数の罰金が多いのか。ここでは 2015年と少し古いデータになりますが、そちらを見てましょう。

・他の乗客を妨害する座り方 3,066件 罰金$50

・許可を受けていない商業行為(車内販売、パフォーマンスなど)882件 罰金$50

・ゴミのポイ捨て 619件 罰金$50

・ドアを手で押さえる(乗り遅れないように) 168件 罰金$100

・車内での迷惑行為 26件 罰金$50

・蓋のない飲料の持ち込み 16件 罰金$25

・アルコールおよび違法ドラッグで酩酊状態 8件 罰金$50

・乗車の邪魔になる大きな荷物などの持ち込み 1件 罰金$75

MTA rules commuters are breaking every day: Causing annoyance, littering, more

 いかがでしょうか?単純比較はできませんが、圧倒的に多いのが「他の乗客を妨害する座り方- 3,066件」になります。そして次が「商業行為(車内販売、パフォーマンス等)- 882件」です。

 もし、これがニューヨークにおけるマナー違反の全体像を表しているとすると、日本と比較して、どう思われますか?

 自分がニューヨークの地下鉄に慣れ親しんでいたとしたら、これらが起きている中で電話で誰かが喋っていても、「通話ぐらいは気にならないなー(大声で歌いだしたりする人いるし)」という感覚になると思います。

 勿論すべての国と比べたわけでは有りませんし、自分も海外で電車の乗車経験したのはアメリカぐらいですから、これが全てではないと思います。

 ただ、そもそものベースが違うことを抑えておくと、日本では問題になる行動も、海外では問題ならないことがありそうですね。

まとめ:自分の感情について自分で制御できるようになろう

 今回はハーファログ(Halfalogue)について説明しました。

 携帯電話に関わらず、こういった思考が中途半端に終わるような情報が一部だけ耳に入ってくるのは、人にストレスを与えるものなのです。

 このようにストレスを感じる原因とその理由について知ることは大事です。

 今回のケースでも、電車内での通話を聞いて「マナー違反だな・・・」で終わらず、そもそも「あれ?そもそも、なぜ自分はイライラするんだろう」と考えるのは重要なことです。

 自分がなぜそのような感情を持つのか。それは自分だけなのか、あるいは一般的にそう感じる人が多いのか。自分だけなら、なぜそう感じるのか。一般的な感情なら、なぜ人はそう感じてしまうのか。

 こういった点を深堀りできることは、自分の感情と上手く付き合えることに繋がります。

 受験勉強で成績が上がらずイライラしてしまうときもあるでしょう。けれども、そういったときに「あー、自分は本気でこの大学に入りたいんだな。それに対して成果が出ないからイライラしているんだ」と、一度自分を客観視できるようになるからです。

 そうすると「それだけ自分は本気で大学に行きたいんだ。この感情を抱くこと自体は悪くないから、一旦休憩して、もう一度落ち着いてから頑張ろう」というように思考と感情を整理することができます。

 社会人になっても、感情を揺さぶられることは沢山あります。そのときに自分で自分の感情と向き合い、自分の機嫌を自分で取れる人になれるといいですね。

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